公開:2023.10.05 08:29 | 更新: 2023.11.20 09:17
(開催日:2023年9月17日)
「下水道の日」がある9月。大阪市下水道科学館では、JICA関西と一緒に世界の下水道に注目した様々な企画を実施。
JICA海外協力隊のお話や各国のマンホールフォトを通じて、海外の下水道の現状や日本との違いを知り、日頃あたり前のように使っている下水道について、改めて考える機会としました。
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9月10日はエクアドル編をお届しましたが、9月17日はカンボジア編として、現地と会場を中継してのイベントを開催しました。
今回は「プロに学ぶおしごと講座」。小学生~高校生を対象に、現在JICA海外協力隊員としてカンボジアの下水処理場で活動中の田中亮さんにお話ししていただきました。
冒頭はJICA関西 トランティ美佳さんからご挨拶。JICAで行っていることを紙芝居で紹介しました。
JICA(国際協力機構)は、ODA(政府開発援助)を使って、日本からいろんな職種の人を開発途上国へ派遣し、現地の人たちと一緒にいろいろな課題解決に取り組んでいます。学校の先生、看護師に加え、中にはきのこ栽培というお仕事など、たくさんの種類の仕事があります。
田中さんはその海外協力隊のお1人で、2年間の任期でカンボジアに行って、水をきれいにして自然に返す下水処理場でお仕事をされています。
では早速、田中さんにお話していただきます!
田中さんからはまず、下水道ってなに?というお話から。下水道がないと、町に汚い水があふれて病気になったり、川や海が汚れて生き物が生きていけなくなる。そこはやはり日本と同じでした。
そして今回は「下水に油を流さないことが大切」というお話がありました。これも日本でも言えることなのですが、油を流すと固まったり他のゴミと混ざって下水道が詰まってしまいます。あとで紹介がありますが、カンボジアはほぼ自然に任せた処理方法なのでなおさら油は大敵です。
正しい処理としては、やはり余分な油は紙に吸わせたり、固めて捨てること。
そして今回は、そんないらない油を捨てずに利用して『廃油キャンドルづくり』をしました。
今回は50年以上も前から廃油のリサイクルに取り組まれている会社、浜田化学株式会社様のご協力のもと、未使用ですが賞味期限切れで使えなくなってしまった油を使って制作しました。
キャンドルのベースは廃油をあたためて、油を固める粉を入れて溶かすだけ。あとはビンに入れて香りや色を付けるのですが、みんなの元に届いたらどんどん温度が下がって固まってくるので、先に色と香りを選んでもらいました。
冷えて固まるまで、キャンドルは置いておきます。
ここで田中さんからカンボジアについて、詳しく教えていただきました。
まず、カンボジアはどこでしょう?地図で見てみました。
意外と近いと思った方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
続いてカンボジアの言葉についてクイズ!カンボジアはクメール語です。クメール語での「こんにちは」はどれでしょうか。
正解は・・・『ソースダイ』です!
そして「ありがとう」は『オークン』でした。同じチームの人と「ソースダイ」「オークン」で挨拶し合いました!
食べ物のお話はみんな特に興味を持ったようで、「たこやき」と書いてあるのにタコがないとわかると「ただの”焼き”やん!」などと楽しい会話が飛び交っていました。
また、カンボジアには日本のODAの支援により、建設された橋があるそうです。日本との関りがいろいろとあるんですね。
そんな経緯があり、カンボジアのお札には日本の国旗が入っているとのこと。田中さんも画面上で見せてくれました。
他にもたくさんのお話がありましたが、現地のことをたくさん知ってまるでカンボジアにいるような気分に。
そしていよいよカンボジアの下水処理場のことと田中さんのおしごとのお話をお聞きしました。
田中さんはカンボジアの下水処理場で水質検査のお仕事をしています。検査室の動画では日本の機械もありました。
カンボジアの下水道普及率は10%だそうです。ちなみに大阪市は99.9%です。改めて、この高い数字は当たり前ではないのだと気づかされます。
水をきれいにするのに微生物を使う点は同じでした。でも、カンボジアは日本よりもじっくり、本当に自然の力だけで処理するそうです。
そのため日本の下水処理場では約14~16時間かかる工程が、カンボジアでは3週間もかかるとのこと。
何段階かの水処理工程があり、田中さんはそれぞれの段階で水質検査をしています。
それまでは4つの項目でしか検査していませんでしたが、田中さんがチームに加わり、今では9つの検査項目を調べることができているとか。たくさん調べれば、より詳しいデータを取ることができ安全を確認できます。
なぜこのお仕事に就いたかと言うと?
田中さんは小中学生の頃、算数や数学が大好きで、数字やデータを見るのが好きだったとのこと。それを生かせるお仕事がしたかったそうです。
好きなことが誰かの役に立つってすばらしいですね。
「みなさんも、好きなことを伸ばして、将来違う国の人の役に立つことにつながっていく可能性がああります。好きなことを続けてもらえたらと思います。」とのメッセージがありました。
質問タイムでは、「雪は降るの?」「野良犬はいますか?」など、カンボジアについての素朴な質問が飛び交いました。みんなとてもカンボジアに興味を持ってくれた様子。
その質問からも、カンボジアは雨がたくさん降る季節があるので下水道が大事といったお話が聞けました。
田中さんとの時間の最後は、みんなで「オークン!(ありがとう)」で終了しました。
参加したお子さんからは「カンボジアでは困っていることも多い。自分にできることは何か考えたい」「下水のことが分かって良かった」など、
保護者の方からは「知らないことばかりで勉強になった。下水のことを学ぶきっかけができて子供と一緒に調べたいと思った」「キャンドルづくりと下水のお話があり、あっと言う間で楽しかった。現地で活動している方のお話を聞けて良かった」などのご感想をいただきました。
さて、会場ではキャンドルも固まって、そろそろ終わりです。きれいな色と香りも大好評。みんなにはビンに好きなSDGsのシールを貼ってもらいました。
キャンドルを見て、この日のお話を思い出してくれたら嬉しいです。
後から分かったのですが、田中さんは日本で人気のマンホールカードの、初の海外カード(カンボジア・シェムリアップ市)を制作するきっかけに関わった方だそうです。シェムリアップ市と滋賀県で配布されいるとのことです!
みなさんも機会があれば見てみてくださいね。